研究概要 |
昨年度に続き,種々の複合語,および複合語に類する表現の用例収集と記述を進めた。特に,昨年度の研究により,複合語と句の中間に位置する(各要素間の結合度が,複合語ほど強くはないが,句よりは強い)ことが分かった表現を中心に,記述を行なった。そのようなものには,「前項要素が名詞であり,後項要素が自動詞であり,全体として自動詞としてふるまう表現」や「preverbと呼ばれる副詞的な語と動詞の組み合わせ」が含まれる。 派生に関しては,「派生」と他の形態論的プロセスとの境界に関わる現象を中心に,記述を進めた。特に,典型的な派生接辞とは異なる性質を持つ,次の2つの接辞を考察対象とした:-CLAN「~のような」,および -TAJ「~持ちの」。 -CLAN「~のような」に関しては,先行研究にごく簡単な記述が見られるだけであるが,派生接辞と屈折接辞の両方の特徴を有しており,モンゴル語における「派生」の全体像をとらえる上で,無視できない存在であることが分かった。 また,モンゴル語学において, -TAJ「~持ちの」は,派生接辞であるとの見解が主流であり,先行研究では,その見解を支持するいくつかの根拠が提示されている。しかし,今年度に実施した研究の結果,先行研究の見解は必ずしも妥当ではなく, -TAJ「~持ちの」が派生接辞であるとは断定できないことが分かった。 「複合語」の箇所で述べた「前項要素が名詞であり,後項要素が自動詞であり,全体として自動詞としてふるまう表現」に関する研究成果,および,「派生」の箇所で述べた -CLAN「~のような」と -TAJ「~持ちの」に関する研究成果は,学会や雑誌論文で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで研究に協力してくれた日本国内,およびモンゴル在住のネイティブスピーカー(調査協力者)から,今後も協力を得られる予定である。そのため,言語データの入手に際して,大きな問題は生じないと思われる。ただし,何らかの事情でモンゴルでの調査ができなくなった場合には,国内での調査回数を増やして対応する。
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