東洋写本研究所(ロシア、サンクトペテルブルグ市)には、古代文字文献である西夏文字資料が所蔵され、それを原版とする貴重なマイクロフィルム形式の資料が東洋文庫(東京)に所蔵される。これらのマイクロ資料の内容を整理し、将来的には目録を公開することを本研究の目的とする。単なる数値・文字データの入力にとどまらず、漢語・チベット語題名の西夏語への訳出規則といった言語学的分析、及び、西夏語仏典の特徴を抽出するという仏教学的見地からの研究も行う。 東洋文庫所蔵マイクロフィルムには、現物の撮影に不可避な誤りに起因して、実際のページが脱落していたり、掲載順序が混乱している場合がある。したがって、東洋写本研究所での現地調査、実際の文献調査を行うことが欠かせない。申請者は今年度も、ロシア、サンクト・ペテルブルグに渡航し、東洋写本研究所にて、主に西夏文仏教文献の実見調査を行った(2013年2-3月)。 初年度より継続する、東洋文庫所蔵西夏文マイクロフィルムについて、申請者の既存の入力データのチェックも行っていた。昨年度終了させた西夏文字(西夏文字題名については西夏文字フォントによる入力)・漢訳・目録番号の入力のチェックを行い、東洋写本研究所所蔵の「西夏語文献原題」「目録番号」を、将来的な公開に向け整備しつつある。 ロシア所蔵西夏文文献を資料とした西夏語に関する論文を英語で執筆した他、各種西夏文字資料の言語学的研究も進め、論文・学会発表の形で成果を公開した。海外の学会(ロシア、シンガポール)で、ロシア所蔵西夏語資料を用いた研究に関し、英語による研究発表も行った。
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