研究概要 |
本研究は,15-16世紀の朝鮮における漢文訓読のあり方を,諺解資料をもとにして追求し,漢文訓読研究の新たな可能性を開拓しようとするところにその目的がある。初年度である平成22年度には,本研究の基盤的な側面を整えるために,いくつかの中期朝鮮語諺解資料について,漢文原文と諺解文との対応関係を漢文訓読の観点からつきあわせる作業を重点的に執り行った。具体的には以下の通りである。1.コンピュータのソフトウェアを活用して,中期朝鮮語諺解資料の漢文原文と諺解文とを対照化させリスト化する作業を推し進めた。2.その際,漢文訓読のさまざまな訓法について注目し,とりわけ特異な読み方をしている部分を抽出して分類しリスト化する作業を進めた。3.8月に韓国に出張し,いくつかの朝鮮語史資料について資料調査を実施した。4.また出張時に開催された借字表記と漢字音を主題とした口訣学会の学術大会に参加するとともに,韓国在住の朝鮮語学研究者数人から最新の研究動向に関する情報提供や本研究に対する協力を得た。5.近年韓国,及び中国で刊行された大型の漢字字典類を中心に,研究に必要不可欠な図書を適宜購入した。6.また,次年度に向けて,漢文原文に対して特異な読み方をしている部分についても予備的な考察を行った。完成年度である次年度は,これらの基盤的な土台をもとにして,諺解資料における漢文訓読法のさまざまな側面について考察を加えるとともに,広く15-16世紀の朝鮮における漢文学習の在り方についても追求し,研究を締め括る予定である。
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