本研究の目的は,キリマンジャロ・バンツー諸語における,文法形式の体系的対応関係を明らかにすべく,とくに,先行研究において十分な調査が行われていなかった諸言語を対象に記述,分析を行い,同言語群を構成する諸言語の類型的多様性を明らかにすることであった.本助成事業によって行われた現地調査は,平成22年度2回(ルヮ語,シハ語,ウル語),23年度1回(ウル語),24年度1回(ロンボ語)の計4回行い,これは当初計画どおりである. 本研究の成果をもとに平成24年度に発表した研究業績は,学会発表5本と図書(分担執筆)1本である.これらのうち,当初研究計画において重視していた,海外のアフリカ諸語研究コミュニティーにむけての研究報告として,World Congress on African Linguistics(カメルーン,ブエア大学),およびColloquium on African Languages and Linguistics(オランダ,ライデン大学)の2つの国際学会において口頭発表を行ったことは,特筆すべき成果である.いずれの発表も,本助成研究のテーマである時制・アスペクト表示にかかる機能形態素のキリマンジャロ・バンツー諸語間の対応関係を扱ったものであり,また先行研究において見出されていなかった知見を含むものである. 一方,分担執筆論文は,キリマンジャロ・バンツー諸語の形態論的諸特徴と,同様に膠着型の語構成をとる日本語の動詞述語を対照するという,これまでになされてこなかった試みであり,日本語研究者を含む,国内の研究コミュニティーに向けた成果発信である.
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