本研究は、ガーナ共和国に話される現地語の1つであるアカン語のアサンテ方言、ファンテ方言、アクアペム方言の3方言の共時的データ構築を目指す。母音調和、声調などにおけるこれら3方言の違いには、歴史的変化が絡んでおり、共時的データ構築は、こういった問題に取り組むための基盤づくりとなる。なお、これに類似する資料は、現在のところない。 これを踏まえ、本年度は、第一に、昨年に引き続き、セントラル州アノマボで約1ヵ月間、ファンテ方言の調査を行った。インフォーマントは昨年と同じ、アノマボ生え抜きの50歳代の男性である。調査は1日約6時間ずつ毎日行った。今回の収集語彙は約3000語で、昨年収集した語彙約2000語と合わせておよそ5000語となり、ファンテ方言の語彙収集は、年度当初に計画したように、これでひとまず達成されたことになる。また、昨年に引き続き、所有名詞句や動詞活用形などの派生形も併せて収集した。第二に、帰国後、手書きのデータを録音資料で音声を確認した上で、エクセル上で入力を行った。 ガーナ滞在期間中、ガーナ大学言語学部を訪問し、同学部上級講師Agbedor氏と調査・研究に関する意見交換を行った。インターネット上アカン語辞書作成団体「kasahorow」研究員のImbeah氏とも辞書作成方法について意見交換を行った。この他、公立・私立小学校、中学校を訪問し、授業の様子を見学し、教員、児童・生徒にインタビューを行った。
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