研究概要 |
本研究の目的は与那国方言の記述文法書の作成である.研究初年度である本年度は,記述の基盤固めの年として位置付けている.本年度の「研究実施計画」では(1)文献調査(与那国方言関連文献と一般言語学文献),(2)研究者との情報交換,(3)現地調査,(4)学会発表・論文投稿を目指していた.以下ではそれぞれについて実績を報告する. (1)について,与那国島方言に関する全文献リストを作成するという当初目標を達成した.さらに,一般言語学的な論考の収集もほぼ完成した.(2)について,与那国方言の研究者である獨協大学のパトリック・ハインリッヒ氏,京都大学PDのトマ・ペラール氏,同山田正寛氏との交流によって音声・映像・文献データを多数入手でき,この交流で得たデータで,本年度進める予定であった音韻・形態の基礎研究が可能となっている. (3)現地調査について,本年度は沖縄本島での予備調査を1回行った.本年度必要としていたデータはすでに上記(2)に絡むもので足りるため,今回の現地調査では話者との関係づくり・話者コミュニティの状況の情報収集,そして自家出版の言語資料の入手などに専念した.その結果,沖縄本島・与那国・日本本土における話者の情報を入手でき,またいくつかの自家出版書籍を入手し,来年度の主要な研究課題であるデータ収集・分析に関して重要な進展が得られた. (4)学会発表については,シンポジウム発表が1件ある(「与那国語の文法記述-現状と展望」).論文投稿について,出版計画中の書籍の編集者(宮良信詳・パトリックハインリッヒ)から,与那国方言についての執筆依頼を受け,上記の与那国研究者たちとの共著としてアブストラクトを提出済みである(筆者は筆頭).その論考では,今年度の主要な成果である文献リストを添付する予定である.
|