研究課題/領域番号 |
22720161
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
下地 理則 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (80570621)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 琉球語学 |
研究概要 |
本年度は、前年度までに収集したデータを書き起こし、分析し、実際に執筆しはじめる時期と位置付けていた。そのうえで、本年度の計画を、①データの書き起こし(既に収集した談話の録音データの書き起こしと、文字化されている談話資料のグロスづけを行う)、②分析 (上記①で作成した談話書き起こしデータ(すなわちテキストデータ)と、活用リストや文献資料における音韻・形態論の分析データをもとに、形態論と統語論の基本的な記述を開始する)、および③確認調査(上記①および②の補足調査を今年度後半に行う)として掲げていた。 ①に関して、目標の半分程度の掻き起しを行うにとどまる結果となったが、これは当初よりも談話の利用を制限する方向で研究計画を転換したからである。結果的に、elicitationデータをより積極的に採取することにつながり、本年度での調査でそれを行った。そのelicitationの方法論に関して多数の先行研究を吟味し、結果として論文の体裁にまとめることができた。この論文は、琉球諸語全体の記述研究にも応用可能なelicitationの方法論をまとめたものであり、本研究における調査で使用しただけでなく、別の科研(狩俣繁久氏が代表を務める基盤A科研)においても採用が決定しているなど、多くの方面に役立つと予想される。②に関して、代名詞体系の分析、動詞活用の分析、基礎的な構文の分析が進み、それは研究成果となって公開ないし出版準備中となっている。③に関して、電話による確認調査にとどまったが、①におけるelicitation調査を補完するものとして有効に作用した。 全体的に、本年度はelicitationの方法論を定め、名詞形態論の概要、動詞形態論の概要、そして構文論のうちごく基礎的な部分の記述を行うことができたといえる。構文論に関するより詳細かつ広範な記述は来年度の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の【研究実績の概要】にあるとおり、本年度の①②③の目標をほぼクリアできているからである。ただし、①に関しては、談話データの利用からelicitationデータの利用への依存が増えた中で、elicitation調査の回数や頻度が満足のいくものではなかったため、(1)の評価にはならなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、的を絞ったelicitationを積極的に行い、短期間で多くの記述項目を埋めることを目指す。その際、上述のelicitationチェックリストを使用する。なお、本研究は与那国方言のほかの研究者らによる記述研究(主に音韻・形態論)の成果と相互補完的になるように、当初の予定よりもより構文論的な部分に焦点をあてて記述を深めていく予定である。よって、研究成果は、記述文法の体裁をとりながらも、構文論をメインに扱う文法書となる予定である。 構文論を重視した記述文法を作成するために、前年度までで明らかにできなかった部分(特に複文やケースマーキング、ボイス、主題化や焦点化など)を、elicitationおよび既存の談話資料データを使いながら記述していきたい。
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