研究課題/領域番号 |
22720163
|
研究機関 | 札幌学院大学 |
研究代表者 |
山越 康裕 札幌学院大学, 人文学部, 准教授 (70453248)
|
キーワード | 記述言語学 / モンゴル諸語 / ブリヤート語 / 言語類型論 / 危機言語 / 文法記述 |
研究概要 |
平成23年度は、以下3点に重点をおき、研究活動を実施した。1.シネヘン・ブリヤート語の形態面にかんする分析、2.モンゴル国での資料収集、3.一次資料公開にむけての文字化、の3点である。以下、それぞれについてその成果を詳細に報告する。 まず、1.については、名詞の所有構造、動詞の屈折について重点的に分析をおこなった。名詞の所有構造にかんしては、「AのB」という意味関係にある名詞句を対象に近隣のモンゴル語、ハムニガン・モンゴル語との比較対照をおこなった。ハムニガン・モンゴル語には従属部(「AのB」での「A」)に付属形式を接続する従属部標示型、主要部(「AのB」での「B」)に付属形式を接続する主要部標示型、双方に付属形式が接続する二重標示型のうち、主要部標示の有無(主要部標示型・二重標示型vs.従属部標示型)が、譲渡可能性に関与していることが強く推測される。一方、モンゴル語、シネヘン・ブリヤート語にも3つのタイプがあるが、ハムニガン・モンギル語のように譲渡可能性に関与しているとは考えにくいということを明らかにした。この成果については、2011年8月禍にモンゴル国で開催された国際モンゴル学者会議(The 10th International congress of Mongolists)にて報告した。動詞の屈折にかんしては、とくに「形動詞」(一般には「分詞」)とされる文法形式にしぼり、派生接辞とみなしうる形動詞形成接尾辞があることを明らかにした。この成果は、『北方人文研究』第5号に報告した。これら分析のための現地調査は夏季には実施できなかったが、春季に動詞の屈折にかんする分析の検証をおこなうことができた。 また、2.としては夏季にモンゴル国に赴き、ブリヤート語関連の文献収集を十分におこなうことができた。3.についてはこれまで蓄積した資料の文字化をすすめ、その一部を『アジア・アフリカの言語と言語学』にて公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、当初夏季および春季の2回、現地調査を予定していた。しかし、調査地(中国内モンゴル自治区)での若干の政情不安(民族運動)により、夏季の調査を断念した。この点で、夏季はデータの検証が十分に行えなかったが、春季調査で十分な成果が得られたため、ほぼ当初計画どおりに進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度が最終年度となるが、これまで蓄積した一次資料をもとに文法事象の分析・研究をおこない、その補完のために現地調査を実施する。なお、仮に平成23年度のように政情不安等が発生した場合には、日本国内に在住する母語話者の協力を得ることを予定している。
|