研究概要 |
平成24年度は、1. これまでに収集した一次資料および研究実績の整理・分析、2. 現地調査によるデータ補完、3. 一次資料(音声・映像)の文字化・加工の3点に重点を置き、研究活動を実施した。その成果としてa. シネヘン・ブリヤート語の動詞屈折にかんする分析、b. 一次資料公開にむけての音声資料の文字化をすすめることができた。以下、a, bそれぞれについてその成果を詳細に報告する。 a. については、これまで収集した一次資料をもとに動詞の屈折について重点的に分析をおこなった。シネヘン・ブリヤート語の動詞の屈折のうち、主節以外の節の述語として用いられる形式が、それぞれどのような統語機能を有しているのかという点について分析し、従来のモンゴル諸語の記述における動詞屈折の分類が、実際の統語機能とは一致していないことを明らかにした。さらに類型的に似通った文法構造を有する周辺諸言語と対照したうえで、アルタイ型の諸言語においては、従来いわれる「分詞」の特徴に必ずしもあてはまらない例が見られることを示した。この成果については、周辺諸言語を研究対象とする他の研究者と共同で、2012年6月に開催された日本言語学会第144回大会にて報告し、さらに2013年3月に『北方言語研究』(北方言語ネットワーク編)第3号にて公開した。今後さらに分析をすすめ、動詞屈折の全体を詳細に記述していくことを予定している。 b. についてはこれまで蓄積した音声資料の分析と文字化をすすめた。2013年3月に実施した現地調査では、母語話者である言語コンサルタントの協力のもとで分析をおこない、多くの音声資料を文字化することができた。当初は年度内の公開をめざしていたが、現地調査の実施時期が遅れたためにかなわなかった。できるだけ早い時期に、他の研究者が利用できるかたちに整理したうえで公開するようつとめる。
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