研究概要 |
本研究は,日本語と韓国語における<話されたことば>の談話を成す<文>のあり方を,とりわけ文末の表現に注目しつつ,描き出すための基礎研究である.1年目は実際の談話を収集し,分析しつつ,とりわけ理論的基礎研究を行うという研究実施計画に沿って研究を行った.研究の最も基礎となる文末への着目から,述語で統合される<述語文>と,述語による統合を見ない<非述語文>という2大分類を行い,本研究の核心となる<非述語文>についての研究成果を学会誌『朝鮮学報』に論文「<非述語文>の現れ方とdiscourse syntax-日本語と韓国語の談話から-」(pp.71-121)として発表した.既存の研究で十全たる<文>として位置づけられていなかった<非述語文>を十全に位置づけ,とりわけ文末の内部構造を解析した.日本語と韓国語の双方に共通する性格と,異なった性格を記述した.終助詞など助詞類が実詞を伴わずに出現する様相は,韓国語にはほとんど見られない,日本語の<話されたことば>の特徴である.さらに述語が出現した後に,非述語的な要素が出現する文の類型化を行った.また,discourse syntaxという観点から,とりわけ助詞が重要な要素となって,対話者間の相互交渉的な談話を形作ってゆくありようを記述した.助詞が,1つの文を超え,対話者の文によって受け継がれ,相互に談話を織りなしてゆく重要な結節環となっていることが見える.こうした<非述語文>の研究に加えて,<話されたことば>を性格づける重要な特徴の1つである<間投詞>についての実践的・理論的研究の成果を麗澤大学において開催された日韓言語学者会議において発表,さらに論文化した.これら研究成果の一部を,韓国語学習教材である『きらきら韓国語』(同学社)に盛り込んだ.
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