本年度の研究では(1)日本語の関係節と名詞句の構造、(2)Dagaareの名詞的sluicing構文の研究、及び(3)日本語のCP補文構造タイプの研究を行った。まず(1)に関してはThe Mechanism of Inverted Relativization : A Silent Linker and Inversion in Japaneseと題する論文がJournal of Linguisticsに掲載されることが決定し印刷中である。この論文は日本語のいわゆるノ関係節が主要部外在型関係節からlinkerと呼ばれる要素により倒置により導出されることを示した。一方、10月にOxford大学で開催されたJapanese/Korean Linguistics 20において発表したKuroda's "Left-headedness" Revisitedと題する論文ではさらにlinkerと呼ばれる要素と日本語の属格の詳しい比較統語論的研究を行った。(2)に関しては香港大学のAdams Bodomo教授の言語データ協力に基づきDagaareの直接・関節疑問文、補文構造と補文標識選択、及び、名詞的sluicingの基礎的な研究を行った。その結果、DagaareではCP構造をもつ間接疑問文が極めて厳しく制限されており、関係節と疑問文の統語構造を共存させたような特殊な名詞的sluicing構文が現れることを明らかにした。最後に(3)に関しては次年度以降の主文に現れる補文CP構造の解明に向けた予備的研究の一環として、日本語の埋め込み補文CPのタイプと諸特徴を整理し研究を行い、Complement Types and the CP/DP Parallelism : A Case of Japaneseと題した論文がTheoretical Linguisticsに掲載された。
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