研究課題
「コーパスに基づいたアイヌ語動詞範疇についての類型論的研究」では、主に動詞の結合価を変えるカテゴリーについて、類型論的に可能な文法マーカーの意味機能の配列を考慮しながら研究を行っている。本年度に、交付申請書の計画とおり、充当(論文1参照)、使役、逆使役(発表2参照)を考慮に入れて、アイヌ語に見られるすべての可能な意味およびシンタクスのタイプについて詳細に記述してきた。さらに、充当のマーカーの文法化についても調べ、国際誌(Studies in Language、論文2参照)に論文を掲載することになった。また、厳密には結合価を変えるカテゴリーではないが、その隣接カテゴリーである非人称受動文の通時的な研究を行い、言語類型論における「非人称構文>非人称受動文>受動文」という仮説に沿った文法化経路に対する証拠を提出した(論文3参照)。そして、科学研究費を使用し、言語類型論研究の最先端であるMax Planck Institute for Evolutional Anthropology (MPI)ライプチヒに出張を行った。そこで言語類型論の最新方法について学んだことと共に、共同研究員として参加しているValency ClassesというMPIプロジェクトのワークショップで口頭発表(発表1参照)、言語類型論的なデータベース(論文6参照)の記入を行った。アイヌ語の動詞結合価を変えるカテゴリーの研究は、大変重要なものです。なぜなら、それは可能なバリエーションについてすでに確立された制限を拡大することにより、結合価を変化させるカテゴリーについての言語理論の地図を塗り替えることに他ならないからです。アイヌ民族の言語と文化は人類の知的遺産であり、このプロジェクトは、アイヌ民族の言語と文化に関して、計り知れないほど貴重な知識を保存するための国際的な努力とみなすことができると自負しています。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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