研究課題/領域番号 |
22720175
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
石山 裕慈 弘前大学, 教育学部, 講師 (70552884)
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キーワード | 日本語史 / 日本漢字音 / 漢音 |
研究概要 |
今年度は、まず昨年度に引き続き、漢籍の中でも広く講読されてきた部類に属する『論語』について、資料を横断した分析を行った。昨年度までに調査を行ったものの中から、まとまった字音点が記入されているものを抽出して考察を行い、その成果を学会で発表した。この内容については、24年度の早い時期に雑誌論文として公表する予定である。 これと前後して、各機関が所蔵する『論語』古写本の現地調査も行った。この中には京都大学に蔵されている重要文化財も1点含まれており、画像データからは窺えない知見を得ることができた。一連の考察の中で、室町時代に書写された『論語』の清濁が必ずしも一定していない様が見て取れた。すなわち、字音の清濁とは、その時々の反省や韻学的知識の介在などに影響されうるものであり、現代語より流動的であったと考えられた。 次に、高山寺本『荘子』の漢字音についても調査し、紀要論文として発表した。『論語』と同じ漢籍でありながら、大学寮での講読は行われなかったなど相違点も存する資料であるが、注釈書の利用のされ方や字音点の日本語化のあり方などに『論語』との共通点も多く見出された。また、最新の研究動向を把握するために、専門書などの購入も積極的に進めた。 この他、漢籍ではあるものの文学作品に分類される『遊仙窟』について、資料の収集とデータ入力を開始した。これは平成24年度の課題であるが、研究を効率的に進められるよう、今年度までに入手していた資料の解析など、可能なところから着手することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述した『論語』『荘子』の漢字音に関しては、ほぼ想定していたとおりの結果を得ることができた。その一方で、文献調査に想定以上の時間が取られたという反省点もあったため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに調査・考察してきた『論語』(大学寮で講読されてきた漢籍)と『荘子』(『論語』と同じく経典釈文で注釈が行われたものの、大学寮では講読されなかった文献)に引き続き、『遊仙窟』の検討に着手する予定である。このような性質の異なる資料を横断的に分析し、いわば補助線を多く引くことにより、漢籍訓点資料における漢字音について、当該資料のどのような属性がどのような事柄に関わっているのか、ある程度の見通しを得ることが可能であると考えられる。
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