研究概要 |
23年度に作成した『太陽コーパス』のラレル文データは,1895年5月,1901年5月,1909年5月,1917年5月,1925年5月と,いずれの年も5月号のみを対象とし,データを集めた。当初,当該年のすべての月(号)を対象に用例を集めていたが,それでは各年の用例数が多すぎて,年代別の比較分析に進めないと判断したため,対象を5月号に限った。各年の5月号のみの用例は,およそ250例ほどである。5年分の用例は,1300例程度になる。これらすべてのデータについて,不要な用例を削除し,自発・可能・尊敬・非情主語受身・有情主語受身という分類を行った。また,動詞の動作主となる語句が表れているか否か,表れているとすればどのような形式で表れているか,ということについて,各データの分析を進めている段階である。当初の計画では,さらに細かく,ラレルに前接する動詞グループを分類する予定であったが,ここまでに至っていない。 また,これとは別に,現代語における「と見られる」の使用に興味を持ったことから,『太陽コーパス』における「見られる」と「見える」の用例について,現代語における用例と,意味・用法(構文タイプ)の分布にどのような違いがあるかという点についても調査した。 非情物が主語に立つ受身文は,近代以降,欧文翻訳の影響で急速に日本語の文法に定着したと考えられている。本研究の成果は,非情物主語の受身文が,特に明治期の書き言葉テキストの中で,どのように定着していったのかという点について,受身用法における非情主語受身文の割合の変化を明らかにしつつある。さらに,非情主語受身文の構文タイプも年代ごとに明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまで自発・可能・尊敬・非情主語受身・有情主語受身と大きく分類した用例(データ)について,さらに細かく,動詞の語彙的な意味(カテゴリカルな意味)と結合価をもとにタイプ分けしていく。そして,年代によって,特に受身用法の用例にどのような変化が見られるかを調査し,分析していく。
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