研究課題/領域番号 |
22720186
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研究機関 | 志學館大学 |
研究代表者 |
又吉 里美 志學館大学, 人間関係学部, 講師 (60513364)
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キーワード | 日本語学 / 方言学 / 琉球方言 / 大山方言 / 文法記述 |
研究概要 |
平成23年度における本研究の具体的成果内容は以下のとおりである。 1.大山方言の臨地調査を実施し、方言資料を収集した。自然会話の聞き取り、録音の他、単語の調査票による調査を実施した。 2.音韻体系の整理をおこなった。前年度の調査において、音韻にもいくらかの特徴が見いだされたので、それを整理した。一般的に沖縄本島の多くの方言では、[ki][gi]の音声を口蓋化させて[tci][dzi]となっているが、大山方言では、[ki][gi]のままで口蓋化をせずに元の音声が保持されている語形も多く見られる。大山方言は周辺地域との音声がやや異なることが従来指摘されてきたが、その一つの原因は軟口蓋音[k][g]における弱い口蓋化であったと言える。口蓋化の弱さゆえに、[ki][gi]を保持することにつながった。また、歯茎音までの口蓋化には至らず、硬口蓋までの口蓋化にとどまったことで[kja][kju]の音声が生まれた。それは大正時代あたりまで保持されたが、戦前には[ka][ku]と直音化が進み、現在の発音に至ったものと考えられる。したがって、拍体系としても、/kja/、kju/は戦前には/ka、/ku/に統合されたと考えられることをまとめた。 3.文法記述では、格助詞について、前年度の調査で得られた12個の格に新たに2つの格形式を加え、はだか格とあわせて、ga、nu、Nka、naka、ni、Nzi、uti、uto:ti、sa:i、si、tu、kara、mari、jukaの15個を見いだした。大山方言の格助詞には同機能を持った形式がある。動作・行為が行われる場所を表示するNzi格、uti格、uto:ti格の3つの形式は、機能差の面での違いというよりは、使用場面や話し手の属性、闘き手の属性などが形式の選択に関わっている可能性が考えられる。また、移動手段を表示するkara格とsa:i格・si格とのあいだに自分の力が必要とされるか否かの意識が関わっていることの内省の説明が得られた。名詞と動詞とのつながりのみならず、使用場面や話し手、聞き手の属性を意識した分析の観点や、名詞の性質、動詞の性質のより微細な記述と分類が必要であることが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大山方言の文法的特徴は順調に整理できている。一方、予定していた周辺地域での臨地調査がほとんどできておらず、大山の周辺地域における調査研究が進んでいない状況である。調査票の準備は整いつつあるので、今年度は大山地域だけでなく、周辺地域への調査も実施したい。
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今後の研究の推進方策 |
大山方言の音韻の整理や文法記述を進めつつ、諸方言との比較研究ができるように周辺地域における調査を積極的に実施する。また、大山の文法記述に関して、特に動詞のテンス、アスペクト、ムードを中心に調査研究を進める。
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