平成25年度における本研究の具体的成果内容は以下のとおりである。 1.大山方言の臨地調査を実施し、方言資料を収集した。自然会話の聞き取り、絵カードを用いた会話聞き取り調査をおこなった。 2.文法記述においては、動詞の形態についての整理を進めた。特に動詞活用の形態について整理を進めることができた。大山方言の動詞においては、強変化動詞、弱変化動詞、不規則変化動詞のタイプ別に整理することができた。一方、比較研究の観点から、津堅島方言の動詞についてみると、強変化動詞A、強変化動詞B、混合変化動詞A、混合変化動詞B、混合変化動詞C、不規則変化動詞にタイプ別され、津堅島方言の動詞変化がやや複雑な傾向にあることが示された。その要因として、大山方言では、混合変化動詞ではki-iN(切る)、koo-iN(買う)のように、連用語幹(基本形)において「母音語幹-iN」となるのに対して、津堅方言では、ki-N(切る)、koo-iN(買う)のように、「母音語幹-N」「母音語幹-iN」のタイプの二つが生じるからである。 3.動詞のテンス・アスペクト形式の整理を進めた。①過去形は弱変化タイプではukitaN(起きた)のように非過去(基本形)の語末-iNを-taNに変化させることで過去形式が作られる。一方、強変化タイプ動詞では、語幹末が子音のため、音融合した形として-raN、-caN、-zjaN、-taNが表れる。②継続相非過去は、完成相過去-taNを-tooNというようにaNをooNに変えることによって作られる(ukitaN→ukitooN)。③継続相過去の形式は継続相非過去の語末NをtaNに変えることによって作られる(ukitooN→ukitootaN)。④過去形式には直接体験、目撃性を表示する形式がある。
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