研究概要 |
本課題の目的は、「範疇を変える接頭辞」(be-,en-,de-,dis-,out-,un-)に焦点をあてて英語の派生接頭辞付加の共時的・通時的特性を検証することである。これら6つの接頭辞を「範疇を変える接頭辞」とする伝統的なとらえ方は適切ではなく、これらも右側主要部の規則からの予測通り、範疇を変えない接頭辞としてとらえられる、というのが、本研究の提案する主要な仮説である。この仮説の実証は、平成22年度の研究においてほぼ完了したので、今年度は、上記6つの接頭辞に限らず、英語の接頭辞の共時的特性をより広く検証するという作業を行った。具体的には、英語の接頭辞一般について、文献の収集と内容吟味、OED、BNC等を用いたデータ収集、論文の執筆、および、学会や研究会での研究発表を行った。そこで得られた観察と仮説は以下の通りである。 (1)英語の接頭辞の音韻的・統語的・意味的特性は、「接辞」という単位のそれではなく、「語」という単位のそれに近い。 (2)よって、接頭辞付加によってできた語は、接尾辞付加によってできた語よりむしろ、複合語に近いふるまいを示す。 (3)上記のような接頭辞と接尾辞の違いは、Lexeme-based morphologyで説明できる可能性がある。具体的には、英語においては、接頭辞は「語彙素(Lexeme)」であるのに対し、接尾辞は文法素性の具現形である。 今年度は、「接頭辞」対「接尾辞」という対立軸で接頭辞の共時的特性を検証したが、接頭辞の中でもいくつかの下位タイプがありうると思われる。それに関しては次年度以降の課題とする。
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