構文文法論における構文の分類について検討することは、構文文法論の意義を深化させる点できわめて重要なものである。本年度は、特に動詞不変化詞構文・使役移動構文・結果構文そして壁塗り構文の目的語に注目して実際の言語データを収集し、分析を行った。Figureを目的語とする動詞不変化詞構文とGroundを目的語とする動詞不変化詞構文は、統語的に派生の関係にあると主張する先行研究があるが、これに対して本研究では、壁塗り構文の目的語との比較から、別個の構文であると考えるのが妥当であることを示した。Figureを目的語とする動詞不変化詞構文とGroundを目的語とする動詞不変化詞構文は、それぞれ、位置変化構文と状態変化構文に類別される。 具体的には、Figureを目的語とする動詞不変化詞構文は使役移動構文やintoおよびontoが生起する壁塗り構文と共通している一方で、Groundを目的語とする動詞不変化詞構文は、結果構文やwithが生起する壁塗り構文と共通していると主張した。 このことについて証拠を示すために、アメリカ・テキサス州の高校生に依頼して言語データを収集した。また、映画DVDやWWWからもデータを収集した。このデータを系統立てて整理し、分析することにはさらに時間を要するが、位置変化構文と状態変化構文という分類の妥当性を高めるための証拠となると考えられる。今後さらに言語データを収集し、これまでに収集したものと併せて分析を行い、この成果をさらに発表していくこととしたい。
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