動詞不変化詞構文に見られる2種類の目的語は、これまで単一の構文の中で目的語が交替することによって2種類の目的語が認可されると考えられてきた。しかし本研究によれば、これらの目的語はFigureとGroundの2種類であり、それぞれの目的語は、2種類の別個の構文によって認可されると説明することが妥当であると示された。このことは、同様の現象がみられるとして知られる壁塗り構文(場所句交替構文)や二重目的語構文との比較から得られたものである。また、意味や語順から、Figureを目的語とする構文は使役移動構文であり、Groundを目的語とする構文は結果構文であるとみなされる。 さらに、ネイティブスピーカーに対する言語学的な文法テストやコーパスのデータなどから、Figureを目的語とする構文は着点のない使役移動構文であり、Groundを目的語とする構文は、結果状態が明示されない結果構文であると考えられる。従って、これらの構文はそれぞれ、位置変化構文と状態変化構文と呼ぶべき構文である。 従来の研究ではそれぞれの構文が独立するものとして扱われており、構文をわける基準は出現している動詞や、目的語の前後に生じる動詞以外の述語の語彙的性質であったために、独立した構文であるとするべき根拠が乏しかった。しかし一連の本研究では、出現する目的語の性質に着目して構文の分析を試みたために、メタ構文としては位置変化構文と状態変化構文の2つが存在すると結論づけられる。またこれまで仮定されてきた構文は、この2つの構文の下位範疇であると言うことができ、その意味は出現する語彙によって決定されるものであると考えられる。
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