研究概要 |
本研究の目的は、本来容認されない(とされる)構文形式が、類推によって実際には認可される現象を認知言語学的視点から分析し、その成果を発表することである。具体的には、because of句主語構文(Just because of X doesn't mean Y)と副詞節による動詞由来派生名詞句の修飾現象(N adverb-clause)を分析対象とし、統一的な説明原理を打ち立てることを当初計画していた。 because of句主語構文の記述研究は一通り初年度に終了しており、本年度は、動詞由来派生名詞句の修飾現象の記述研究を昨年度より継続して行い、その上で理論的意味合いを検証した。その結果、以下の内容を含む論文の公刊及び学会発表をおこなった。 (1)被修飾要素に関して、当初の研究計画とは異なり、非動詞由来名詞(例:danger, storm)も副詞節で修飾される例があることが明らかになったため、「動詞派生名詞」ではなく「文と同じような意味を表す名詞」という記述が妥当である。 (2)修飾要素に関して、副詞節だけではなく、純粋な副詞による修飾も可能であることが先行研究により観察されているため、副詞類一般による修飾を包括的に説明できる意味制約が必要である。 (3)当該構文の認可には、coercion(強制)の原理がかかわっている。 上記(1)~(3)のような成果を得られた一方、計画当初の想定とは異なる言語事実も見つかったため、当初計画していた「because of句主語構文と統一的な原理での説明を行う」という最終目標の達成は現段階では難しく、この可能性を探るためには今後も研究を継続していく必要がある。あるいは、両構文は全く異なる原理で説明されうると捉えたほうが妥当である可能性もある。これらの問題に関しては今後の課題とする。
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