研究概要 |
平成23年度に取り組んだ研究項目は以下の通りである。「(人称)代名詞縮約の通時的変化」(項目1)を研究の中心としつつ、関連現象として「否定辞縮約の通時的変化」(項目2)にも着手した。一方で、20世紀以降顕著に確認される非人称詞の談話標識化と、その過程における所有人称詞の生起についても調査を開始した(項目3)。 1.(人称)代名詞縮約の通時的変化(icham>I'm'tis>it's,etc.) 2.否定辞縮約の通時的変化(you aren't>you're not,it isn't>it's not,etc.) 3.非人称詞の談話標識化と所有人称詞の生起について(thing is, ...>my thing is,...,etc.) 項目1については平成22年度に研究発表を二度行い、一つは平成24年度初夏にJohnBenjamins社からの論文刊行が確定され、もう一つは現在執筆中である。項目2については平成23年度に研究発表を行い、既に学会誌に慫慂論文として掲載されている。また、慫慂研究発表の機会を与えられた項目3については現在論文を執筆中である。本研究課題の中心である項目1および2の文献調査およびコーパス検索はほぼ完了しており、国際誌への投稿準備段階である。特に(人称)代名詞縮約の形態依存関係の変化は通言語的に見て異質である一方、先行研究では特別視されていない点で成果刊行の意義は深い。 本研究課題の取り組みから発展した項目3は、次年度以降の研究課題として重要である。人称詞と認識動詞からなる評言節(comment clause)あるいは談話標識の研究史は長いが、非人称詞と繋辞からなる構文の談話標識化の研究は世界的にほぼ皆無に近い。この点については、平成24年4月に開催された国際学会で、英語史研究の第一人者であるLaurel Brinton教授およびHubert Cuyckens教授と確認済みであり、両教授から今後の研究に対して激励された。とりわけ、my thing is, ...等の一人称所有格を伴う表現群は話者の主観性の統語的反映であり、これまでの理論的基盤に対する実証的反例でもあるため、国際的な(共同)研究活動へ繋がる可能性が高い。
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