研究概要 |
本研究では、英語における限定用法の形容詞が、名詞と関わる事象を修飾する際、事象のどの部分を修飾するのかに関して構文・現象毎に検証し、各構文において、どのような意味的関係を築き、意味拡張が起こるのかを明らかにすることを目的としている。 本研究1年目の平成22年度は、軽動詞haveを伴うHave a構文と、意味拡張について検証した。事象を修飾する形容詞であるquick hasty, hurried の3つの形容詞を取り上げて、事象名詞を修飾する場合と、普通名詞を修飾する場合における、修飾のメカニズムを検証した。これら3つの形容詞は、事象の時間的推移の速さを表す点において、意味的に類似していながら、後続する名詞との修飾関係をみると、分布に違いがみられる。 本研究では、事象名詞の場合、普通名詞の場合、いずれの場合も[NP-V-a/an-A-N]から成る統語形式を共有している点に着目し、事象名詞の修飾のパタンから、普通名詞のパタンに意味拡張を経て、形成されることを提案した。 そして、これら一連の形容詞が普通名詞を修飾する際、形式的には普通名詞を修飾していながら、意味的には事象を修飾する「形式と意味のズレ」が引き起こされるので、それを解消するために、Vのスロットを満たす動詞の語彙情報が事象の修飾を可能にするための情報を提供する役割を果たすことを明らかにした。提案に基づき、hasty, hurriedは、事象名詞を修飾するパタンよりも、修飾対象が普通名詞を修飾するパタンの頻度が高い理由を明らかにした。 なお、本研究の成果の一部は、招待講義(金澤 俊吾、「英語における形容詞の修飾について-転移修飾語のしくみ-」、京都外国語大学Mebius Summer Session 2010、2010年9月13日、京都セミナーハウス.)、論文としてまとめた。 また,本研究2年目の平成23年度に向けて、軽動詞構文と同族目的語構文の意味的拡張について、軽動詞構文と転移修飾表現を含む意味的拡張について、経験的事実の収集を行った。
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