研究概要 |
本研究の最終年度である平成23年度は、軽動詞haveを伴うHave a構文と、形容詞が生起するWay構文に関する意味的特徴を検証した。Have a構文に関する先行研究では、事象が非有界的(unbounded)でなくてはならない」と主張されてきた。本研究では、必ずしもこの規則が適用されない事例があることを指摘し、have a walkに関して有界性が指定される必要があることを明らかにした。その指定のされ方は、2つのパタン(語彙的に有界性が決定されるパタンと、文脈から有界性が決定されるパタン)に大別され、最終的には3つの下位パタンに分類されることを提案した。また、当該構文と意味的整合性が取りやすい主語名詞の「楽しい」感情を表す形容詞だけではなく、主語名詞のその他の心理状態、一時的状態、動作の速さ、動作の状況を表す形容詞がそれぞれ生起できることを示した。 形容詞が生起するWay構文のうち、walk one's wayの意味的特徴について考察した。walk one's wayは、walkの語彙的性質に基づき、[one' way],[one's way-PP]が、それぞれ主語の指示対象が移動する経路を表すと考えると、walkの語彙的性質から合成的に形成されることを提案した。これにより、前置詞句を伴わないwalk one's wayが容認される事実に対し、walkの語彙的性質から決定されるパタンであり、経路の移動が前景化される現象であることを示した。とりわけ、one's wayを修飾する形容詞が生起する際に、この傾向が強くみられる。この事実に対して、経路の移動の過程および形容詞が表す主語名詞の状態が、同一の時間軸を共有し、歩く過程と主語名詞の状態が前景化され、終点を示す前置詞句が生起しにくくなることを示した。 いずれの現象においても、形容詞は、事象名詞walk,名詞句one's wayから、それぞれ喚起される動作や動作を行う人の心理状態、一時的状態を表す。この修飾関係は、当該表現に固有にみられる特殊なものではなく、限定用法の形容詞の修飾の仕方の1つであり、英文法の体系に組み込まれるべき関係であることを明らかにした。
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