本研究は、留学生と日本人学生が接触する場面での会話を分析することによって、異文化間状況での対人関係構築のために、留学生、日本人学生のそれぞれが必要とする会話能力を明らかにしようとするものである。 その目標達成のために、研究期間中に三つの調査を予定しているが、そのうち、平成22年度には、調査Iのためのデータ収集・整備を行い、分析の一部を開始した。 調査Iは、初対面における異文化間での二者間会話を分析し、留学生の文化的背景が会話へ及ぼす影響を調べるものである。今回新たに収集したデータは、欧米系留学生と日本人学生による20分の初対面会話18組の録音である。来年度以降、留学生の口頭能力による影響も考察できるよう、中級者と日本人学生の組の会話を8組分、上級者と日本人学生の組の会話を11組集めた。その後、会話分析のために文字化資料を作成・精緻化し、既に収集済みの中国人留学生と日本人学生による初対面会話18組との比較ができる状態にまで準備を整えた。 データ収集後、調査Iのための分析の一部を開始した。会話への関与という点から、留学生が日本人学生のふるまいを非好意的に評価した部分のインタラクションをマイクロ分析し、どのような会話の特徴がそのような評価につながったかについて考察した。その結果については、論文にまとめ、現在投稿中である。 以上のデータ分析に併せて、第二言語話者の会話におけるターンテイキングについても考察し、言語知識の不足をいかに補い、インタラクションを成り立たせているかについて口頭発表で論じた。
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