研究概要 |
本年度は、日本占領下の中国華北地方で特別市として制定されていた北京・天津,青島の3市において資料収集を行った。北京では国家図書館、天津では天津档案館と天津市図書館、青島では青島档案館と青島市図書館を訪問し、所蔵調査および資料収集を行った。特に、青島市では档案館での資料収集が順調に進み、次のことが明らかになった。 青島特別市では、日本語の検定試験を行い、その合格等級によって手当を支給するという方法で日本語学習が奨励されていた。青島での日本語奨励試験は、青島治安維持会日本語学検定試験(1938年)を経て1939年に青島特別市公署日本語学試験、1940年には青島特別市公署語学検定試験として行われた。日本語学試験から語学検定試験への変更は、試験科目に中国語が加わったことが関係していると考えられる。 中国語科目では、実際に受験し合格している日本人の存在を確認できる。青島特別市の語学奨励試験は、その奨励金の金額と支給期間を満鉄と満州国のものを参考にしていた。市公署の中でも教育局、警察局、総務局が中心となって実施が提案されたと思われる。 このような試験は北京特別市でも行われていたことが明らかになっているが、試験による市公署職員の日本語学習の奨励は、中華民国臨時政府・華北政務委員会等の主導によって行われたものではなく、それぞれ地域が独自に行っていたものであった。天津でも同様な資料調査を行う予定であったが、本年度は調査計画が遅延したため、天津における詳細な調査は次年度に変更した。また、次年度は地域による違いを中心とした資料収集・分析を更に行い、それをふまえ華北の中国人官吏に対する日本語能力養成の全体像を明らかにするという課題に取り組む予定である。
|