研究概要 |
今年度は初年度であるため、これまでの研究成果を公表することで様々な方面から意見をもらい、研究計画の妥当性を確認すると共に今後の研究の方向性を定めることに焦点を置いた。 まず、日本語の移動動詞イク・クルの通時的な意味・機能変化について考察し、それらがヴォイス機能を担うに至った過程の解明につとめた。イク・クルのヴォイス機能についてはまだあまり広く知られてはいないが、日本語のヴォイス体系の隙間を埋める重要な役割を担っている。これについてはIJSシンポジウム2010(2010年5月22日、神戸大学百年記念館六甲ホール)にて口頭発表を行った。 次に、これまでは別々に論じられることの多かったレル・ラレル、テイク、テクル、テヤル、テアゲル、テクレル、テモラウの各言語形式が用いられる文構造の特徴と各形式の持つヴォイス機能について整理し、その体系性を提示した。(『日語日文学研究』74-1(2010年8月)に掲載) そしてさらに、日本語ヴォイスの中でも特にネガティブな意味・機能を生じさせるレル・ラレル文、テクル文が表す事態を認知モデル化し、それらに用法基盤モデルの考え方を応用して映像教材を作成することで日本語教育への応用可能性を探った。本研究の考え方が正しければ、これまでの第二言語習得研究をまた違った角度から検討できるようになり、日本語教育においても大きな成果が期待できる。これについては第7回日本語実用言語学国際学会(2011年3月5,6日、サンフランシスコ州立大学)において口頭発表を行った。 その他、来年度以降の研究でパラレルコーパス(日本語・韓国語・中国語・英語)として使用する資料の収集と、会話データを収集するための予備調査を行った。
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