本研究の目的は、第二言語としての日本語の習得過程において、単一の文法項目(本研究では受身文)内においても動詞による使用状況の違いが存在し、習得過程が異なっていることを横断的調査によって一般化可能性を探ることである。 母語話者との会話による縦断的発話データを用いたこれまでの研究で、受身文で使用される動詞を他の文法項目との関係で分析を行ったところ、使用される状況は一様ではなく、受身で使用される動詞(「語彙受身」とする)と他の文法項目でもひろく使用される動詞(「文法受身」とする)に大別できることが示唆された。 本年度は、この縦断的発話コーパスから得られた結果を量的に確認するための調査方法の検討、および調査の実施を行った。 まず、「文法受身」および「語彙受身」に分類される各動詞がその特徴を有していること、また、自由発話コーパス分析では明らかにできない点である、「使用しない(あるいは、できない)のか否か」という点を検証するための調査デザインを行った。理解調査(イラストで提示された場面の正誤判断)および、産出調査(イラストで提示された場面の口頭描写)を実施した。調査は、2011年3月に中国のA大学で日本語を専攻する大学生(中国語母語話者)1年生~3年生を対象に行った。2012年度は調査結果の分析を行い、縦断的発話データの分析結果と合わせ総合的考察を行い、成果をまとめる。
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