本研究は、イエズス会士ヴァリニャーノAlessandro Valignano(1539~1606)とサレジオ会士チマッティVincenzo Cimatti(1879~1965)を「イタリア人宣教師と日本語」という観点から比較対照するものである。3年計画の2年目である昨年度(平成23年度)の研究成果を最終年度である本年度(平成24年度)に「アレッサンドロ・ヴァリニャーノとヴィンチェンツォ・チマッティ(II)日本派遣の背景」(『サレジオ工業高等専門学校研究紀要』第39号所収)及び「アレッサンドロ・ヴァリニャーノとヴィンチェンツォ・チマッティ(III)ヴァリニャーノと日本語」(『サレジオ工業高等専門学校研究紀要』第40号所収)にまとめた。平成23年度の研究目標を「イタリア語話者の第二言語習得・日本語習得に関する文献収集及び検討」から「イタリア人宣教師ヴァリニャーノとチマッティの日本語観に関する文献収集及び検討」へと若干修正したため、より確実且つ信頼性のある研究成果へと繋げることができ、本年度(平成24年度)の目標である「ヴァリニャーノ日本語学習関係文献とチマッティ日本語学習関係文献の比較対照分析及び記述」への展開が可能となった。チマッティ資料館(東京都調布市)での調査活動及びキリシタン学研究の中心的組織「キリシタン文化研究会」における他の研究者との意見交換を通じて、ヴァリニャーノが実践した「適応主義」のアプローチをコミュニケーション論的観点から再考し、同じ見地からチマッティのアプローチを検証した上で、両者を比較対照分析することの学術的意義が大きいという判断に至った。「適応主義」は言語の習得に寄与するところ大きく、特に学習の動機付けに関連性が見いだされる。ヴァリニャーノとチマッティ本人の習得した日本語運用能力が限定的であったとは言え、同時期に来日した他の宣教師・修道士の日本語習得事例を考えれば、日本語学習者の基本的な姿勢として効果的なアプローチであったと考えられる。 (790字)
|