研究課題/領域番号 |
22720208
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
小林 葉子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (00352534)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 外国語学習言説 / 言語イデオロギー / 外国語学習動機 / アジアの台頭 / グローバル言語としての英語 / ビジネス言語としての中国語 / 就活ネタとしての留学経験 / 女磨きとしての語学学習 |
研究概要 |
過去3年間の研究(科学研究費補助金若手研究(B)「英語圏語学学校での民族交流と留学成果の国際比較:日本人の個人的留学動機とその影響」)を土台にしている本研究の3年目として、以下の研究を行った。 1.一つ目の研究課題として、近年の留学や語学学習がどのような言説(言語イデオロギー)として表れているか調査した。国内言説に関しては、大宅壮一文庫雑誌記事索引Web版や日経BP記事検索サービスなどを利用し、キーワードを含む記事を抽出し、データベース化した上で、テキスト分析ソフトを利用して分析した。具体的には、様々な読者層を対象とした雑誌や新聞記事、外国語教育産業、教育機関(大学・学部)が再生産し続ける「語学力」言説を比較分析した。想定学習者層別、性別、言語別などの変数による言説のカテゴリー化を行った。調査結果の一部を国内学会にて発表をした。 2.二つ目の研究課題として、プチ語学研修等を経験し学生たちが、就職活動の際、その「異文化的」体験をエントリーシートの中でどう言語化するのか、そして、「専門家」はどう助言をしているのかについて、データ収集した。1と同様に、テキスト分析ソフトを用いて分析を行った。なお同時に、「異文化体験」と就職活動の関係を、国際的に比較・考察するための文献・資料調査を行った。例えば、北米では「エントリーシート」はなく、「履歴書」の中身そのものも日本とは大きな違いがあり、一概に比較はできない。しかし、これまでの調査から、いずれの学生たちも自らのプチ異文化体験を差別化し、昇華させ、企業側に「売っていく」姿勢が、企業側からも求められ、教育者からそのように助言されていることが明らかとなった。 3.1-2を統合的に「言語教育の課題」という観点から考察を進め、論文にまとめ、3本は国際ジャーナル(または学会アンソロポロジー)に採択された。さらに数本を現在投稿または準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前頁でも記載したように、二つの研究課題を軸に、それぞれのデータベース作りが軌道に乗りつつある。いずれの課題に関しても、先行文献がほとんどなく、独自性に富む研究課題である。つまり、政府、メディア、大学機関、語学産業などは常に「語学力」言説を再生産し続けているが、そうした言説を言語の区別をせずに体系的に、経済効果の点も踏まえて調査した言説研究は、文献調査を見る限り、本研究が最初である。 こうした成果が3つの英語論文として採択されたことは大きな成果である。特にそのうち二つは、応用言語学または大学高等教育学においては知名度のあるジャーナルである。また、国内学会発表においても、テーマの独自性を評価してもらった。さらに、国際ジャーナルに投稿した論文に対する、査読者や編集長からのコメントも大変建設的、前向きのものであった。採択の可能性は十分にあると思われる。また、現在、本研究成果に基づき、別の2つの論文投稿を準備中である。 これらの成果を鑑みると、おおむね順調に進展している、と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に研究計画に基づいて、研究を推進していく予定である。今年度は国会図書館などでのデータ検索とデータ分析、論文執筆と投稿、学会投稿と発表などが中心となる。よって、計画実施に支障となるような問題が生じる可能性は少ない。
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