本研究は、韓日大学生の相手国民に対するイメージの実態と形成メカニズムを究明し、それに基づいたイメージ尺度を開発することを目的としている。平成22年度は、日本の5大学で韓国人に対するイメージの構造調査を行い、日本人大学生の韓国人イメージの根底にある5つの視点(「気さくな隣人」「熱い表現者」「想い強き者」「反日家」「有能な勤勉者」)を導き出し、韓国人との接触場面で先入観として作用しやすいイメージの内容を明らかにした。そして、韓国人イメージと日本人イメージの内容調査および構造調査の結果をもとにそれぞれイメージの仮尺度を構成し、尺度抽出調査(平成23年度実施予定)の質問紙を作成した。さらに韓日大学生の相手国民に対するイメージの内容を比較検討し、韓日間の対人接触において次のような誤解が生じうることを浮き彫りにした。第1に、お互いに抱いている相手国民に対する反感が両者に必要以上の緊張感と過度な警戒心をもたせる。韓国人大学生の日本人に対する「侵略者・支配者」としての否定的な認識と日本人大学生の韓国人に対する「反日家」としての否定的な認識が先入観として働き、ポジティブな面を発見してもその真実性を疑ってしまう恐れがあると思われる。第2に、対人関係のあり方の違いに関するお互いの認識が過度に一般化され、相手に対する判断を歪める。韓国人大学生は日本人を「常に一定の距離を保つ存在」、日本人大学生は韓国人を「積極的に距離を縮める存在」として認識していた。このような両者の認識は、異文化知識として働き、相手の行動を理解する手助けとなりうる一方で、先入観として作用し、相手に対する正しい判断を妨げる原因ともなりうることが予測できた。
|