研究の目的は、日本人英語学習者の心の中の辞書(心的辞書)において派生接辞付き語がその語幹となる語と、どのような語彙ネットワークを構築しているのかを明らかにすることである。具体的には、2種類の手法(プライミング及びマスク・プライミングを用いた語彙性判断課題)を用いた心理学的実験を英語学習者並びに、英語母語話者に課すことで、以下の3点を明らかにすることを目的とする。 1.派生接辞付き語と語幹は、意味・形式(綴り・音韻)により繋がっているのか、それとも、派生形態素レベルでの繋がりであるのか 2.語幹と派生語のネットワークは英語習熟度が増すにつれて、どのように変化していくのか 3.語幹と派生語のネットワークは、日本人英語学習者と英語母語話者とでは異なるのか 研究初年度である平成22年度は主に、資料収集および実験計画の策定に努めた。資料収集は文献調査を中心とし、主に心理言語学関連の書籍・学術論文を収集した。また、言語および心理学に関連する学会に参加し、関連資料を収集した。以上の資料収集は年度を通して行った。 年度中盤からは実験計画を立て、実際に実験に用いる実験項目を選定し、パイロット実験を行った。実験項目は、クロスモーダルプライミングを用いた語彙性判断課題およびマスク・プライミングを用いた語彙性判断課題の両方に使用するものを選定した。実験項目の妥当性を検証し、実験手順を確認するために、少人数の参加者を募り、実際にパイロット実験を行った。パイロット実験の結果、実験項目の妥当性が立証され、実験手順の確認ができたので、次年度以降、本実験を行う見通しが立った。
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