研究の目的は、日本人英語学習者の心の中の辞書(心的辞書)において派生接辞付き語(以下、派生語)がその語幹となる語と、どのような語彙ネットワークを構築しているのかを明らかにすることである。クロスモーダルプライミングを用いた語彙性判断課題を日本人英語学習者に課した結果をまとめ、第38回全国英語教育学会愛知研究大会において「日本人英語学習者の心的辞書内における派生接尾辞付き語と語幹のネットワーク構成」として発表した。 研究から明らかになったこととして、日本人英語学習者は、英語母語話者と同様に、英語派生語の内部構造に敏感であり、派生語を語幹と接尾辞に切り分けて処理していることが分かった。また、意味だけが似ている語彙の間、または、形式(綴り)だけが似ている語彙の間、意味関連が弱い語幹と派生語の間には、互いに影響を与えるほどの強固なネットワークが構成されていないことが明らかになり、語幹と派生語は形式的な類似性に加えて、強い意味関連がある場合において、強固なネットワークが形成されていることがわかった。 これらの結果から、英語学習者はほとんどの言語知識を宣言的知識として習得し、手続き的知識として用いるのはほんの限られた場合のみであるという仮説ではなく、言語学習の早い段階で手続き的知識を得ているという仮説が支持される可能性が示唆された。
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