研究課題/領域番号 |
22720211
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
仲 潔 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (00441618)
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キーワード | 言語観 / 言語文化観 / 英語教育 / 国際英語 / 共生社会 / 多言語状況 |
研究概要 |
本研究の最終目標は、共生社会に向けた異言語教育のあり方を再考し、方向性を示すことである。この目標に向けて平成23年度においては、スリランカ共和国およびフィジー諸島共和国を訪問し、現地の英語教員へのインタビュー調査、小・中学校の授業観察などを行った。いずれも、イギリスの旧植民地であるが、現地の言語を優先しつつも、英語を土着の言語と融合する形で独自に形成しつつある。その結果、より多くの人々が英語使用者となっている反面、英語を使用できない人々との間の経済的格差がますます大きくなっているという両面が見られた。 また、日本語および英語の母語話者・非母語話者の言語認識を考察することも目標のひとつであるが、研究を進めるにつれ、彼/彼女らの言語に対する認識の違いには、文化やコミュニケーション全般に対する認識の違いが背景にあるという見解にたどり着いた。そこで、主として留学生が受講する担当講義において、日・英語の発想法の違いをもとにした議論を重ね、そこで得られた知見をDVDに作成するというグループワークを行った。このような日・英語の持つ文化的背景・コミュニケーション認識の相違を、より多くの学生に問題意識として共有してもらいたいとの思いから、私の担当講義の一部でも取り上げるようにしている。 本研究では、英語教育の抱える諸問題のうち、とりわけ言語(文化)観に重きをおいているため、英語教員(および英語教育講座所属の学生、つまり将来の英語教員となる可能性のある者)が持つ言語観や、検定教科書に掲載された本文から読み取れる言語観も考察の対象となる。これらのうち、前者に関しては、原稿を脱稿しており、近々刊行される予定である。後者については、本年度より教科書が改訂されたこともあり、現在取り組み始めたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2010年度に大病を患ったため、一定期間、文献調査を中心とした研究しか行えなかった。また、研究を進めて行く中で、当初予定していた言語表現上の差異よりは、その背後にある文化やコミュニケーションに対する意識がより大きな問題として浮かび上がった。研究の最終目標から外れることはないが、若干の修正を行うことになった。以上から、当初の計画という意味では遅れているという見方もあり得るが、むしろ研究の深さという点では、進展しているとも考えられる。ゆえに、上記(2)と自己判断した。
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今後の研究の推進方策 |
英語教育において「文化」を扱うことが唱えられて久しいが、この場合の「文化」は例えば「日本文化」や「欧米文化」といったように、静的なものとして捉えられ、文化がコミュニケーションにとってどのような意味を持つのかについては、曖昧なままである。そこで、英語教育において文化がどのように捉えられてきたのかを明らかにし、多文化・多言語共生社会を前提とする場合に、どのような取り組みが必要となるのかを考察し、私の現地点での取り組みを研究成果として報告する。
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