研究概要 |
本研究の目的は,大学生に求められる英語運用能力に対する明確な到達目標を,動機づけ的視点を組み込んだ形で策定することである。上記の目標を達成するため,本年度は教師が利用するいわゆる「動機づけ方略」(motivational strategies ; Dornyei, 2001)に対して,学習者はどのような認識を持っているのかを明らかにするとともに,その認識が彼(女)らの英語熟達度や英語学習に対する動機づけによってどのように異なるのかを調査した。その結果,動機づけを高める上で有効だと考えられる動機づけ方略には,行動前段階に関連する「適切な目標・規範設定」「興味・関心の喚起」,実際の行動段階に関連する「励まし・自信の支援」,行動後段階に関連する「肯定的な自己評価の促進」といった4つのカテゴリーが見られること,つぎに他の動機づけ方略に比べ,「適切な目標・規範設定」に関してはそれほど肯定的な認識が得られない傾向にあること,さらに英語熟達度や動機づけが異なる学習者は,多くの動機づけ方略に対してそれぞれ異なった認識を持つ傾向にあることが示された。とりわけ,最後の点に関しては,熟達度に比べて,動機づけはより大きな影響力を有する傾向にあることが明らかになった。次年度以降は,以上から得られた理論実証的知見を踏まえた具体的な到達目標基準の設定やその妥当性の検証,さらにそれらに基づいた英語プログラムの開発の準備といった作業に取り組んでいく予定である。
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