研究概要 |
本年度の研究計画ではとりわけ2つの研究課題に焦点を当て,研究を進める計画を立てた。以下では,それぞれについてその計画の概要,おもな研究成果について具体的に述べる。 1.動機づけの発達プロセスに影響を与える要因の同定 どのような要因が動機づけの発達プロセスに肯定的な影響を与えるのか,あるいはそこに学習者の個人差がどのように影響を与えるのかを明らかにすることができれば,動機づけの維持・発達だけでなく,効果的な英語カリキュラムを開発する上でより具体的な示唆を得ることにつながると考えられる。そこで,廣森(印刷中)では,学習者の動機づけと動機づけを高めると想定される指導方法(動機づけ方略)に対する認識を調査し,その調査結果を活用して計画・実施された指導実践の効果を検証した。研究の結果,そのような実践は英語学習における動機づけの喚起に効果があることが示された。 2.動機づけと他の学習者要因との関連分析 学習者の全体像を掴むためには,動機づけなどの情意的要因だけでなく,学習方略などの行動的要因,学習者信念などの認知的要因を含めて統合的な視点から学習者を捉える必要がある。そこで,Hiromori, Matsumoto, & Nakayama(in press)では,英語リーディングに焦点を当て,学習者のリーディング力の変化と上記の学習者要因との関連を縦断的に検討した。研究の結果,リーディング力が順調に伸びた学習者の中には,異なった特徴の見られる学習者グループの存在が明らかとなった。すなわち,学習者を成功に導くルートは1つではないことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
1年目,2年目の研究を通じて,動機づけの発達プロセスの様相,それに影響を与える認知的,情意的,行動的要因などの個人差要因との関連については,徐々に明らかになりつつある。今後,3年目はこれまでに得られた知見を踏まえ,動機づけ的視点を取り入れた英語プログラムの構築を目指す。その際とくに教材開発(学習タスクの開発)等には時間を要することが予想されるため,必要に応じて共同研究者の協力を得たいと考える。
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