本年度の研究計画は,平成22年度,平成23年度に得られた研究成果を踏まえた授業実践を設計・実施し,その効果を検証することであった。実際の授業実践にあたっては,プレ-ポストデザインによる実験方法を採用し,授業前後にCan-Do調査,動機づけ調査,動機づけ方略調査,パフォーマンス調査(到達度テスト)を実施した。教育的な配慮から,実験群・統制群を設けた調査ではなく,プレテスト-ポストテストでの変化を比較・検討する手法を用いることによって,授業実践による教育的効果を検証した。研究仮説としては,Can-Do調査による自己認識や動機づけ的要因の発達に加え,パフォーマンスの向上も見られるものと予想したが,おおむねそのような結果が得られた。ただし,後述するように,学習者の動機づけ特性によって,授業実践の効果には差が見られたため,今後はそのような知見を踏まえた授業実践の計画・実施が必要だと考えられた。本研究の意義・重要性としては,動機づけ研究で得られた理論実証的知見を英語プログラムの構築に反映した点が挙げられる。従来から,到達目標に準拠した学習支援は強く求められてきたが,そこには本当の意味での「学習者」は存在しなかった。そのような現状に対して,本研究は実際の学習指導における目標設定に動機づけ的視点を取り入れ,そのような支援を行う上での具体的視座を提供した。学習者の実態をよりリアルに反映した形で設定した目標に基づき学習と指導を実践することは,効果的な学習支援を行う上で重要かつ有意義な試みだと考える。
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