冠詞習得に関しては、日本人英語学習者は、限定、非限定の文脈で正しく冠詞を選択できたが、明示的否定知識が含まれる文脈では誤りがみられた(定冠詞の過剰使用)。これはロシア人英語学習者と同じ誤りであった。このことから、冠詞選択のパラメータ(ACP)へのアクセスが限られる場合があるという習得に関する一般化が導き出された。さらに、代名詞習得に関しては、主語・目的語位置における非顕在的な要素を解釈する際、日本人英語学習者はスペイン人日本語学習者よりもsloppy読みを許容した。この結果から、非顕在的要素の統語ステイタスが、日本語では項削除であり、スペイン語では空代名詞であることが明らかになった。本研究は、構文を超えて「文脈」の中で冠詞と代名詞の解釈を考慮して学習者のL2習得過程の検証を行う重要性を示し、また、第二言語習得理論、言語学理論の両見地からもL2習得のメカニズムを探ることができた。
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