本研究の目的は、日本の高等学校で使用されている英語検定教科書の文化に関するテクストの分析と、授業における教師のテクストの使用方法や読み手のテクストへの反応の調査を行うことで、学習者の多面的な文化理解を促す教材開発のための指針を示すことである。今年度は高校英語検定教科書のテクストに内包される国や文化に対する特定の視点を明らかにするため、テクストの批判的談話分析を行った。今回分析したテクストは日本の漫画文化と世界とのつながりに関するものである。分析の結果、日本人の視点による記述、読書の日本の文化に対する誇りを喚起するような表現の使用、取り扱われている外国がアメリカに限定されていることなどが明らかとなった。また、今回の分析で使用したテクストを初めて読んだ際の読者の反応を調査するため、同テクストを読んだ生徒に自由記述式のアンケート調査も行った。その結果、回答した生徒全員が、テクストを読んだことで日本の漫画文化に対して肯定的な意見を持ったり、さらに肯定的な気持ちを強めたりしたことがわかった。アンケート調査の後、授業で批判的にテクストを読む活動を行い、再度アンケート調査を行ったところ、日本の漫画の肯定的な面のみが記述されている点や取り扱われている外国がアメリカのみであること、学校教科書として否定的な面も盛り込みながら中立的に記述するべきであるとの回答が得られた。今後は、英語教科書への外国人読者の反応も調査し、今回行った教科書の分析とアンケート調査の結果と合わせて、多面的な文化理解へと導く教材ついて検討する。
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