本研究の目的は、日本の高等学校で使用されている英語検定教科書の文化に関するテクストの分析と、授業における教師のテクストの使用方法や読み手のテクストへの反応の調査を行うことで、学習者の多面的な文化理解を促す教材開発のための指針を示すことである。平成24年度は文化の取扱いに関する量的な調査を行う予定であったが、研究協力者との話し合いで、政治組織としての国家など、特定の枠組みに文化を分類することは、文化の多様性の軽視につながるとの指摘があった。また、量的なデータよりも、教科書内に登場する文化が英語の授業でどのように教師に扱われ、生徒に解釈されているかを調査することによって、多面的な文化理解を促す教材開発や教育実践に活かせる知見を得られると判断した。そのため、教科書の量的な調査は行わず、平成22年度と23年度の研究結果を基に、文化に関するテクストを読む際に使用するクリティカル・リーディングの発問のチェックリストを作成し、中学、高校、大学の英語教員を会員とするコミュニカティブ・ティーチング研究会の研究発表会で共有した。研究発表会では、提示した発問のチェックリストを使用して、実際に、英語の検定教科書内のテクストを読むための発問を作成してもらい、その後、チェックリストに関するフィードバックも得ることができた。また、本研究の成果の一部は、研究協力者と共にIATEFL 2012 Glasgow Conference Selectionsで報告した。
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