平成24年度は、(1)ロシア・ハバロフスク、およびコムソモリスク・ナ・アムーレ調査、(2)研究成果のまとめと公表、をおこなった。 (1)について。6月にハバロフスク州郷土博物館、コムソモリスク・ナ・アムーレ芸術博物館を訪問し、館所蔵の中国製絹地を用いた衣服等、ナナイの民族資料に含まれる真鍮製飾りの所在調査をおこなった。調査の結果、サハリン所在の資料ときわめて類似する資料があることがわかり、アムール川下流域からサハリンにかけて広範に分布していること、その背景に諸民族間の交易活動を想定できた。 (2)について。平成22年度にサハリン・ネクラソフカで実施した聴き取り調査・物質文化資料調査の成果をまとめ、調査報告として職場の研究紀要に公表した(平成23年度に聴き取り調査の内容をロシア語から日本語に翻訳し、今年度に分析してまとめた)。また、文献史料からわかる19世紀中ごろ以前の諸民族間の交易品(中国製の絹製品=蝦夷錦、青玉、煙管等)の状況について、関係史料の整理をおこない、前者同様に調査報告の形で公表した。(1)調査の分析には、館所蔵資料の詳細な分析、資料カードの撮影と分析等の追跡調査が必要であり、研究成果を公表するためにはなお数年かかると判断し、新たに科研費を申請して実施することとした。調査の概報については、平成25年度中に公表し、成果の還元を図る予定である。
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