研究初年度にあたる本年は、現在東京大学史料編纂所に伝存する太政官時代の史料群のうち、以下の二つの史料群に注目し、その構造把握と、そこから生成される編纂物の歴史的性格の分析をおこなった。 第一は、史料編纂所の旧赤門書庫に伝存し、未整理状態におかれていた太政官歴史課・修史局・修史館時代の公文書である。これを仮に「修史局・修史館文書」と命名し、その一点ごとの封筒詰め、目録化作業を実施した。その過程で文書群の構造、そこに含まれる若干のサブシリーズ等についての知見を得た。現在、東京大学史料編纂所図書室において一般公開に向けた準備が進められている。 第二は、史料編纂所所蔵史料4000番台を中心に配架されている「征西始末」の編纂材料および稿本類である。当時の目録に基づいてこれら史料群の秩序を復元し、あわせて稿本の成立順序を確定した上でその特質を明らかにした。この知見は、第五〇回内務省研究会(一〇月一七日、於慶應義塾大学三田キャンパス)での口頭報告を経て、「明治太政官における歴史記述の模索-修史館編「征西始末」をめぐって-」(『東京大学史料編纂所研究紀要』第二一号)として発表した.
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