本年度は、研究計画の最終年度として、成果の取りまとめならびに公表に重点を置いた活動をおこなった。具体的には、11月の再調査ならびに3月に成果報告書「イタリア史料の収集および整理による中近世移行期日本史像の再検討」の刊行、配布である。とりわけ、報告書の取りまとめには多くの時間を必要としたこともあり、研究成果報告を直接の目的とした口頭発表の機会を得ることはできなかった。ただし、研究成果の一端を踏まえた口頭報告は実施している。 再調査は、前年度における、イタリア調査における調査の欠を補うことを主たる目的として、11月14日から30日にかけて実施した。調査対象機関は前年度とほぼ同じであり、ローマおよびヴェネツィアの諸機関であるが、今回はフィレンツェのメディチェア・ラウレンツィアーナ図書館を追加した。国内における関係研究のなかで、同館を調査対象としてのは、本研究が初であろうと認識している。調査対象史料は、具体的には天正遣欧使節関係史料、または地図であり、適宜慶長遣欧使節に関わるものも確認した。これらは、ローマ以北のイタリア諸機関に広く存在することが知られている一方で、先行研究における把握状況は、しばしば請求番号が記されていないなど、必ずしも現在の情報の要求水準に応えるうるものではないものも少なくないためである。また、これらの確認作業のなかで未紹介史料へ到達する可能性があると考えており、作業の結果、未紹介を思われる関係史料を少なくとも数点確認している。 これらの成果に加えて、本年度8月まで滞在したいた、ロンドンの大英図書館(英国図書館)における関連史料の情報を加え、上記報告書を作成した。当該図書館の情報は、帰国後に同報告書への掲載を目的に整理したものである。南欧語史料約100点に加え、英文、和文の日本関係情報を極力包括的に掲載した。
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