今年度は、毛利分国・後北条分国に関して、(1)「戦国領主」の検出、(2)「家中」構成員・所領分布の解明、(3)それをもとにした大名分国の権力構造の分析の作業を進めた。(1)と(2)は、「戦国領主」関係史料の収集とデータベースの構築によっておこなうが、毛利分国に関しては、これまでの研究でその作業をおおむね終了し、(3)を進めてきた。本年度は未刊行史料の調査をおこない、その成果を補完した。調査を予定していた岩国徴古館・下関市立長府博物館・広島県立文書館には、必要な史料がないことがわかったため、山口県文書館と島根県立図書館について調査をおこなった。山口県文書館では、主として『譜録』の調査をおこない、所載の中世史料をすべて抽出し、撮影した。島根県立図書館でも、旧島根県史編纂時の謄写本を中心に未刊行史料を調査し、撮影した。これにより『新修島根県史』に未収載の史料を多く入手できた。以上の調査により、膨大な未刊行史料を使用して、従来の成果を補完することができた。後北条分国については、刊行史料を用いデータベース作成を進めている。以上の作業により、「戦国領主」の「家中」と「領」についての基礎的データが体系的に明らかになりつつある。また、こうした成果を受け、今年度は既発表の研究も合わせて、主として毛利分国の研究成果を中心として著作をまとめ、公刊することを目指した。新稿の執筆と、既発表論文の改訂を進め、成稿することをえたため、出版に向け、研究成果公開促進費に応募した。
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