研究課題/領域番号 |
22720246
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
村井 良介 神戸大学, 大学院・人文学研究科, 特命助教 (30419684)
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キーワード | 日本中世史 / 戦国大名 / 大友氏 / 武田氏 / 毛利氏 / 後北条氏 / 「戦国領主」 / 国衆 |
研究概要 |
今年度は、主として大友分国・武田分国に関する史料の収集と、そのなかから「戦国領主」関連史料の検索、データベース化を進めた。収集・検索対象は、大友分国に関しては『大分県史料』『増補訂正編年大友史料』『大友宗麟資料集』など、武田分国に関しては『戦国遺文武田氏編』『信濃史料』『山梨県史』『甲府市史』などである。主として大名権力以外の判物発給者に着目し、それに関する史料を抽出した。「戦国領主」概念は厳密な規定がされていないが、判物発給を指標とすることが一定の有効性を持つことは、後述の毛利分国における「戦国領主」の文書発給について分析した論文において明らかにした。それを踏まえ、大友分国・武田分国でも、判物発給者を中心に、それらと同等と判断される「戦国領主」の候補となる領主を抽出し、その関連の史料を検索するという形で進めた。 なお、昨年度から進めている毛利分国・後北条分国に関する史料収集・データベース化作業についても、さらに遺漏等の補訂をおこなった。 また、これまでの研究成果をまとめた著書として『戦国大名権力構造の研究』を刊行したが、吉川氏・小早川氏の発給文書や、毛利分国の「戦国領主」の「家中」および所領に関しては、本研究で昨年度おこなった、山口県文書館・島根県立図書館における史料調査成果によって、事例を追加・修正することができた。さらに、本研究の毛利分国に関する研究成果に基づいて、毛利分国の「戦国領主」の文書発給に関する検討をおこない、「毛利分国における「戦国領主」の文書発給をめぐって」と題する論文を執筆した(未公表。査読中)。同論文では、毛利氏および「戦国領主」の宛行状・安堵状を主として検討し、15世紀半ば以降に、これらの領主の宛行状・安堵状発給が開始されること。それは、戦争による領地の拡大などを契機に本格化することを明らかにし、それらが単に守護公権の下降分有としては位置づけられないことを論じた。 このほか領主制に関連して論文「大山喬平氏の研究と地域」を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各大名分国の関連史料が予想より多く、また、各史料集間で重複している史料をチェックするのに予想より時間がかかった。また、「戦国領主」を検出するための条件をより詳しく再検討したのにともなって、史料検索の基準を変更したので、その分の見直しなどで、予定より、やや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでどおり、史料の収集、データベース化を進めるとともに、それらの成果をもとに論文を作成していく。合わせて、今年度までに終了予定だった大友分国、武田分国の作業が、完全には終了しなかったので、これを次年度もおこなうとともに、予定していた島津分国・上杉分国に関する作業を縮小する。また、毛利分国の史料についてはおおむね補訂も終了したが、後北条分国についてはまだ補訂作業が若干残っている。隣接する武田分国の作業と重なる部分があるので、合わせて進めたい。また最終的な成果を報告書にまとめる。
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