本年度においては、戦国期の後北条分国、大友分国、武田分国の「戦国領主」関係史料の資料収集、検索、データベース化作業を進め、一部、上杉分国、島津分国についても着手した。後北条分国と大友分国、武田分国に関しては、主要な史料集の検索を終えたが、分国周辺地域や、その他の史料集については検索作業がまだ残っている。また、すでに検索した史料集についても再度の確認作業や、基準の統一、人名・年代比定の修正といったデータベースの整備作業がまだ残っているので、今後もこうした遺漏の調査と、データベース作業を継続していき、成果を公表したい。なお、この間に史料を収集・検索し、分析した成果の一部として、2013年5月に口頭報告を用意している。 毛利分国に関しては、こうした整備作業まである程度終えることができたため、本年度はそれをまとめ、研究成果報告書を刊行し、成果を公表した。毛利分国の「戦国領主」に関連する史料を一覧表にし、また「戦国領主」の家臣、被官等がわかる史料については、その人名を掲載した。これにより、毛利分国における「戦国領主」の「家中」の構成員が通覧でき、その成り立ちや大名権力との関係を明らかにするための環境を整えることができた。また、こうした毛利分国についての研究成果の一部は論文「毛利分国における「戦国領主」の文書発給をめぐって」(『戦国・織豊期の西国社会』所収)として公表した。 このほか本年度まとめた、3年間の成果としては、「戦国領主」の家臣・被官等の分析に基づき、従来の「家中」論を相対化した、領主編成についての新たな見方を提示できる目途が立った。これについては前述の口頭報告で一部発表する予定である。また、本年度の成果により、ある程度、西国と東国の大名権力を横断的に検討することができるようになった。これにより個別大名権力研究に分散化している状況を克服が可能になると考えている。
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