研究課題/領域番号 |
22720256
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
原山 浩介 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (50413894)
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キーワード | 婦人運動 / 貫戦史 / 戦争協力 / 奥むめお / 消費者運動 / 市民運動 / 現代史 |
研究概要 |
本年度は、前年度に続き、奥むめおの思想史的系譜を追うための資料収集を行うと共に、収集した資料の分析を行った。 この過程でとりわけ意識したのは、婦人救済と戦争協力の見かけ上の「反転」のなかで、奥をはじめとする婦人活動家がどのような葛藤を抱えたのか、あるいは逆に「戦争協力」を通じていかなる形で活動家としての自己実現を遂げたのか、という部分をめぐり、分析に資する形でディテールを汲み取ることを視野に入れての資料分析であった。この点については、現状でははっきりとした形で成果を示すことができないが、少なくとも、「活動家」であることと「戦争協力」が、単なる転向や、きれいに切り取ることのできるような「反転」ではなく、いわば状況に引き裂かれていくことを示す断片を析出しつつある。 これらを全体として統合していく上では、戦時という時代をどのように把握するのかが大きな課題になるのは間違いないが、同時に、人びとを救済しようという時の、対象となる人びとの生活のあり方や、そこから生まれてくる様々な要求が、それぞれの時代におけるフェアネスの水準でどのように整理・統合され、共有されてきたのかという点も見逃せない。つまり、「生活」という、一面では曖昧模糊としたもの、を、二定の正当性が認められる形で社会問題化し、あるいは要求として社会的に訴えていくという、素朴でありながらも時代性が強く刻印される営みを、どのように対象化しつつ把握するかが重要となる。 このいささか抽象性の高い問題は、本研究課題において必ずしも中心的な課題とはなっていないが、戦後の消費者運動をめぐって本研究と関わらせる形で検討し、その成果の一端を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集と分析は、計画と引き比べてみたとき、全体としては順調であるといえる。ただ、調査対象の拡大によって、当初想定していた資料のなかに、十分に検討できないままとなっているものが含まれており、したがって、「計画以上に進展」という評価は当たらないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画で予定していた資料をめぐり、遺漏なきよう、最終年度に補足調査を実施する。また、当初計画通り、最終年度には、近現代における市民運動と国家・企業の関係性に関わる分析をすすめ、研究のとりまとめを行う。
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