本研究は、江戸幕府、大商人資本、および江戸時代の朝廷に関する個別研究が精緻化・細分化していることを鑑み、その総合化を目指し、これらの結節点にあたる領域を分析することを目的とした。具体的には、江戸幕府の上方における財政を統括する行政機構、およびそこから恒常的に財政支援をうけた朝廷に対して、巨大商人資本が「御用」などを通じて果たした役割とその影響を問題とし、これに関する資料を収集し、基礎的なデータベースを作成し、具体的・通時的な分析をおこない、上記3分野の総合化に向けた分析視角を検討しようとするものであった。 今年度はまず、これまでに引き続いて、各地の公的機関の目録や関連図書類の収集を続け、史料情報の集積を進めた。 また、収集した情報をもとに、国立公文書館、国文学研究資料館、宮内庁書陵部、東京大学史料編纂所、京都府立総合資料館等において史料調査を実施し、史料を収集した。朝廷の上皇や女院の御所の財政を担い、商人と接触のあった部局の公記録を中心に収集することができた。 紙媒体での複写のみを認める機関の史料については、いったん紙媒体で収集した後、スキャナ・画像処理ソフトで電子データに変換・整理し、基礎的な内容についてのデータベースを作成した。 上記を踏まえ、江戸時代の幕府・朝廷、巨大商人資本に関する研究知見を総合化する論点を検討し、史料の残存状況からみて検討可能な問題領域を整理した。
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