本年度(平成22年)は、明代中期の科挙制度、特に景泰帝から英宗(正統・天順帝)復辟の時代に焦点をあて、科挙合格者数が、政治状況・時代背景からどのような影響を受けるかを具体的に分析した。この時期、会試合格者(科挙最終合格者の実質的な人数が概ね決定される)の人数にかなりの変動が見られるが、その背景には以下のような要素が働いている。 (1)土木の変という国事多難の時代にあって、英宗に代わって皇帝の地位についた景泰政権の舵取り。とりわけ、皇位継承を広くアピールするための材料となった。 (2)景泰政権から奪門の変を経て皇帝の座に返り咲いた英宗の、景泰政権時代の施策、更には英宗個人の景泰帝への感情。 (3)国子監生の増加に対する、国家の緊縮財政上からの処遇問題。 以上の内容を、まず応科研第七回研究集会(9月、東北大学)にて発表討論し修正した。その上で科挙与科挙文献国際学術会議(12月、中国寧波市)において「景泰天順両朝的政権運営与科挙-従景帝即位至英宗復辟」という題目で発表し、多方面の科挙研究者から有益な助言をえた。 また、同国際会議に参加することによって、寧波に位置する科挙文献の大集積地ともいうべき「天一閣」を訪問し、現地の研究員から発表に於いて使用した文献に関して、様々な情報を得ることができた。
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