本研究は、中央アジア南部の定住オアシス地域社会(ホラズム)の存立に不可欠な要素であり続ける灌漑に注目しながら、その地域的特質を実証史学の手法により明らかにすることを目的とした。とくにウズベキスタン共和国のイチャン・カラ博物館蔵 kp. 3894 番文書を読み解きながら、16-20世紀のオアシス内での定住民=遊牧民関係の変容を、自然環境の変化、ロシア帝国の中央アジア統治の性格、帝国権力と現地政権・社会との灌漑事業をめぐる複雑な利害関係などと関連づけながら論じた。その内容を『中央アジア灌漑史序説―ラウザーン運河とヒヴァ・ハン国の興亡―』(風響社、2014年)にまとめた。
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