本研究の目的は、1940年代初めから50年代末まで(毛沢東期)の中国を取り上げ、中国共産党による支配の構造的特質について明らかにすることである。このため本研究では、まず1940年代の華北農民の規範意識を分析し「面子」観念の重要性を指摘した。つぎに内戦期の土地改革の資料を分析し、「人民の意志」の最終的な解釈権を独占していたのが毛沢東であり、共産党の支配の正当性は「最も正しく人民の意志を理解できる者」としての毛沢東に依拠していたことを明らかにした。さらに1950年代の農業集団化の政策決定過程を考察することによって、このような構造を持つ支配は中華人民共和国にも引き継がれていたことを明らかにした。
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